Yoga ばなし

ヨーガの源

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太古の昔より人間は自らの心や体を見つめて生きてきました。現代よりも自然との繋がりが深く、その移ろいを、直接いのちの感覚でとらえながら生活してきたことが古代の遺跡や、現在も自然とともに生きている人々から感じることができます。  空や風の流れ、海や川、山や草原、動物や植物などの生物、岩や巨石、宇宙や星々…など、こうした自然環境の中で生きている状態では、より繊細な感覚や観察能力を肌感覚のように感じていたのかもしれません。

 

このような自然の中で生きていく経験や自分の心や体を理解していく為の自力の模索は多くの発見に繋がり、自分の生命の豊かさ(自己の存在や既にその中にある貴重な潜在的な能力など)に気付き、さらに育んでいったものと思われます。

 

こうした人間の暮らしや、自己を模索していく姿勢、根源的な感覚は、私たちが地球で生きる上でのベースとなるもので、そうした流れがいわゆる‘ヨーガ’にも繋がっていったものと推察されます。私たちがヨーガをするときも、この姿勢や感覚を頼りにできれば、きっと自分の中の豊かさに気づき、繋がっていけるのでしょう。‘自分の心身に直接意識を向けてその声に耳を傾ける’こうした人間のあり方そのものを‘ヨーガ’と表現しています。

古代文明に見るヨーガ(Yoga、ヨガ、瑜伽)

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インダス文明
(写真は モヘンジョ・ダロ 「死者の丘」)

 紀元前2600年~紀元前1800年頃に栄えた 世界四大文明 の1つインダス文明の都市遺跡のモヘンジョ・ダロから坐を組んで瞑想をしているような坐像の印章が見つかっております。(年代は諸説あり)
このインダス文明は現在のパキスタン、インド、アフガニスタンを流れるインダス川とガッガル・ハークラー川(古代にインダス川と並行して流れていたとされる現在は流れていない川)の周辺に栄えました。

 

この文明の都市遺跡として ハラッパ― や モヘンジョ・ダロ は特に有名ですが、1990年代にもドーラビーラ―という遺跡が見つかっています。これらの遺跡はしっかりとした設計のもとにつくられていて沐浴場や下水などの水処理施設も見られます。そして現在でも解読不能とされるインダス文字も大きな特徴の1つです。この文明は謎が多く、その衰退・滅亡の直接的な原因もよくわかっておらず、諸説があげられています。

 

※ ガッガル・ハークラー川は リグ・ベーダ の中に出てくる サラスヴァティー ではないかとの見方が強いです。この川跡の周辺からは遺跡がよく見つかっています。

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インダス文明を代表する都市国家の分布(※ピンクの囲い 大まかな位置)

 チグリス川とユーフラテス川の周辺で栄えたメソポタミア文明(現イラクの一部)からもインダス文字の書かれた印章が発見されていることから、インダス文明とメソポタミア文明の交流があったとも言われています。

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写真の中央は1~3世紀頃に栄えたクシャーナ朝の仏塔
(モヘンジョ・ダロの遺跡の後方にそびえる)

古代文献にみるヨーガ

 「ヨーガ」という言葉が出てきたのは 紀元前800年~紀元前 500年頃にサンスクリットで書かれた 古ウパニシャッド の1つ『 タイッティリーヤ・ウパニシャッド 』という書物になります。また 紀元前 350年 ~ 紀元前 300年頃に書かれた 『 カタ・ウパニシャッド(カータカ・ウパニシャッド)』の中では、ヨーガをする人を馬車に例えて、『 跳びはねる馬のような自分の心に軛くびき や手綱たずな をつけて制御する』という表現で心の統一についての説明が書かれています。

img_古代文献にみるヨーガ

図はヨーロッパ風のスタイルですが 馬車のイメージとして

ヨーガ はサンスクリット語の ‘ yuj (結びつけること) ’に由来する語で、英語の ‘ yoke (軛 くびき) ’も同じ語源と考えられています。

 

ちなみに‘ ウパニシャッド ’とは200以上ある書物の総称で、‘ 奥義書 ’として訳されていますが、語源としては‘ 近くに座す ’という意味合いになります。ウパニシャッドができた時期は書物によって紀元前800年頃~紀元後1500年代までと幅広く、その大きな特徴の1つに『 梵我一如 ぼんがいちにょ 』という思想があります。これは宇宙の普遍的な原理法則(梵、ブラフマン、宇宙我)と個人の原理法則(我、アートマン、個人我)の根本からの一致を説いたものです。そしてこの思想をさらに洗練し発展させたものが、8世紀にシャンカラによって説かれた 梵(ブラフマン、宇宙我)のみが存在するという 『 不二一元論 ふにいちげんろん 』になります。

 

ヨーガ・スートラ(瑜伽経)

2~4(6)世紀頃には パタンジャリ という人物によって『 ヨーガ・スートラ 』というヨーガの実践方法が編纂されますが、パタンジャリ1人の仕事というよりは、ヨーガを実践した先人達の遺した情報を複数の人が引き継ぎながら纏(まと)めていったという見解もあります。
‘スートラ’は ‘ 糸 ’ を意味していて、いくつもの詩のような長さの文章を糸を紡ぐようにして連ねまとめたものになります。この経典は4章からなり、ヨーガを「心の働きを抑制すること」としてその目的を定義づけし、「八階梯のヨーガ」が大きな特徴としてあげられます。

 

- ヨーガ・スートラ  ‐

第1章 (51節) ヨーガの定義づけ など
第2章 (55節) 禁戒、勧戒、アーサナ(坐り方)、プラーナーヤーマ(調息)、制感 など
第3章 (55節) 凝念、静慮、三昧 など
第4章 (34節) そのほか

- 八支則 (八階梯) ‐

ヤマ

禁戒 きんかい
やってはいけない戒め。非暴力・嘘をつかない・不盗・貪るな禁欲(性的に淫らになるな)

ニヤマ

勧戒  かんかい
すすんでしたいこと。道徳など
清浄・知足(足るを知る)・苦行・読誦・自在神祈念

アーサナ

坐法 ざほう
坐り方 ※ここのアーサナは現代のヨガのようなポーズィングをさしていない

プラーナーヤーマ
調息 ちょうそく
呼吸によるプラーナ(気)の摂取法(呼吸法)

プラティヤーハーラ
制感 せいかん
特定の対象に意識を向ける前に、いちど自分に意識を戻す

ダーラナー

凝念  ぎょうねん
特定の対象に意識を繋げる。瞑想の状態

ディヤーナ

(ディヤーン)
観想 かんそう
静慮 じょうりょ
特定の対象に意識が繋がって展開している状態。

瞑想の状態。「禅」の音写

サマーディ

三昧 ざんまい
意識がこれまで客体化していた対象そのものになる

(一体化、対象そのものを映す)

 『 ヨーガ・スートラ 』 はヨーガ学派の根本経典で、この学派はヨーガを実践することで心身を統一して解脱することを目的にしていました。またヨーガ・スートラをベースにした系統は『ラージャ・ヨーガ』と呼ばれ、研究者からは『 古典ヨーガ 』とされています。

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ハタ・ヨーガ(Hatha Yoga)

つづく